序章   あなたの魂 (ユリギス・ブレカイチス)   霧の中 (ヘルマン・ヘッセ)  パルチザンの葬儀 (ジョナス・アイスチス)
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序章 (2)  霧の中  

ヘルマン・ヘッセ詩
 高橋健二訳 高見優子朗読
 

 不思議だ、霧の中を歩くのは!
 どの茂みも石も孤独だ、
 どの木にも他の木は見えない。
 みんなひとりぽっちだ。

 私の生活がまだ明るかったころ
 私にとって世界は友だちにあふれていた。
 いま、霧がおりると、
 だれももう見えない。

 ほんとうに、自分をすべてのものから
 逆らいようもなく、そっとへだてる
 暗さを知らないものは、
 賢くはないのだ。

 不思議だ、霧の中を歩くのは!
 人生(いきる)とは孤独であることだ。
 だれも他の人を知らない。
 みんなひとりぽっちだ。
 



ヘルマン ヘッセ (Hermann Hesse)
トイツ詩人 (1877−1962)
出典: 弥生書房刊「新ヘッセ詩集」