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第11章  希 望  

フリードリッヒ・フォン・シラー詩
 神保光太郎訳 松本いずみ朗読
 

 人間は誰でもより良い未来の日について
 さまざまなことを語り、夢みるものだ。
 幸福でかがやかしい目前にむかって、
 人間はみんなあたふたと駆けてゆく。
 この世界は古びて行き、そして再び若返るが、
 人間は、いつも、より良きものへの希望を捨てない。
 
 希望があって人間は生きがいを感ずるのだ。
 希望は愉しげな子供のまわりにはためき、
 希望はその魅惑の光で若者を惹きつける。
 希望は老年と共に消えはしない。
 人間がその疲れた夢みの終結を墓場の中に求める時も
 人間は自分の墓のそばにかかげるのだ ― 遂げられかったその希望を ―
 
 希望は断じて虚ろなまやかしの妄想などでもなければ

 ばか者の頭脳のこねあげるものでもない。
 胸の底から高らかにきこえてくるもの、
 ― われら、より良きものをもとめて生きる ―
 このうちなる声の告げるところのもの、
 これこそ希望を棄てない魂を裏切りはしない。

 



 

フリードリッヒ・フォン・シラー (Friedrich von Schiller)
ドイツ詩人 (1759−1805)
出展: 神保光太郎編 「ドイツ詩集」 白鳳社刊