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第14章 臍 帯 イナ・コントヴァイニーテ 詩   

横川 秀夫 訳 
 高見 優子 朗読
 


 私の生まれるまえの年には私の内部にひとつの記憶がある
 私が眠りにおちる夜のかなたには私の内部にひとつの夢がある
 私の部屋の扉の外にはそこから遠くはなれたひとつの大地がある。
 これこそ私のなかにあるリトアニアへと結びつく太古からの絆なのだ。
 
 目的もなく鳴り響く性急な今世紀から遠く離れて
 バルチックへの記憶のせりあがりのなかで
 琥珀石が深く横たわる古代の海の底の底へと
 海鳥たちが突っこんで行く。
 
 大空の下、淡青色の大気をいっぱいに満たす
 野イチゴのつよい芳香と共に
 毛皮の森やそのなかの翳ったオークの樹木の空地は
 太古のメロディーと静かに共鳴しあい答えてくる。
 
 幾マイル離れようと幾日も日々は過ぎようと
 私が生まれるまえから絆はつらなり
 リトアニアへの郷愁は残っている ―
 まるで地球への重力のように強く。




イナ・コントヴァィニーテ (1941−     )
リトアニア詩人
 英語原文: リトアニア大使館提供