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第8章 置物 (3)

一輪挿し
 


居間の

サイド・テーブルの上に置かれ

無造作に活けられた

一輪挿しのバラをみつめながら

僕は思う

 
バラを活けるのだったら

こんな風な無造作がよい、と

また

それがバラに対するせめてもの

愛と感謝の形ではないかとも

すっくりとまっすぐな細い首と

その頂点にあでやかに咲く

なんともいえない花の薄紅と

手を加えられたことのない葉の緑との

絶妙な色彩のハーモニーと形のバランス

 
しゃっきりとした一枝のバラを

無心にみつめながら

僕は心底感動する

つくづく美しい、と

そしてまた思う

涙をさそわれるほどに

実にけなげだとも