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第10章 東と西 (2)

呉昌碩
 


清代庚寅秋・即ち福暦
 
白文・「金彭」 朱文・「白寿」 を両の手にひっさげて
 
呉昌碩は中国の篆刻界に登場する
 
時に大器四十二歳、俊郷を号す
 
 
雄渾な気迫ははその腕と手を通じて
 
篆刻刀に集中され
 
刀は七分の正方の石面を刻 (き) り
 
全くの無作
 
刀のスベリは無作の必然で
 
その必然が石を裂 (き) りまた弾く
 
 
知・情・意と石と刀との渾然一体
 
ー  なんでこんなモノ凄い印を創れるのか
 
自分はただただ驚嘆する
 
そのただならぬ稚拙に
 
その天衣無縫に
 
その気高い品格に
 
さらには呉昌碩を生み育てた中国という大地に
 
その伝統にその愛にその懐深さに
 
 
そしてまた思う
 
こんな凄い凄い文字の文化の歴史の流れの中に
 
この身を置けることの
 
至福を