清代庚寅秋・即ち福暦
白文・「金彭」 朱文・「白寿」 を両の手にひっさげて
呉昌碩は中国の篆刻界に登場する
時に大器四十二歳、俊郷を号す
雄渾な気迫ははその腕と手を通じて
篆刻刀に集中され
刀は七分の正方の石面を刻 (き) り
全くの無作
刀のスベリは無作の必然で
その必然が石を裂 (き) りまた弾く
知・情・意と石と刀との渾然一体
ー なんでこんなモノ凄い印を創れるのか
自分はただただ驚嘆する
そのただならぬ稚拙に
その天衣無縫に
その気高い品格に
さらには呉昌碩を生み育てた中国という大地に
その伝統にその愛にその懐深さに
そしてまた思う
こんな凄い凄い文字の文化の歴史の流れの中に
この身を置けることの
至福を