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第12章 光と影 (4)

思索の旅
 


長い間私は個という概念について考えてきた。そして出口もなく今もまだそれ
について考え続けているが、当初のそれは全体というものに対するまたは全

体の中での個人というものの尊厳について群ないし集団に対するアンチテー

ゼとして出発したものであった。

 
けれどもそれに関連して最近、自由というものとその自由にリンクしての倫

理というものとの関係において、それら個・自由・倫理という三者は相補完し

あい複合的に取り扱われて行かなければならない.とする考えになってきて

いる。
 
 
この身をこの列島の一隅に置き、言ってみれば、西洋と東洋と日本という思

想の混在ないしは混沌(ケイオス)の中にこの身を置いていて、そのについ

て特別分析的に考えているわけではないが、東洋という範疇の中にある孔

子の謂う単純にして明快な 「己の欲せざるところ他人にこれを施すこと勿

れ」 とする仁という概念の中に自分の考えている個という概念の規範を発見

できるような気がする。が、それだとて未だ確かなことではなく茫たるのな

か。

 
孔子の仁にこだわらずともまだまだ思索の旅は尽きないが、なにかしら新た

な一つの方向を見出し始めているようではある。 ・・・ が、それは政治・社会

思想とはまったく別物の私自身の文学としてのそれだ。

 
わが思索の旅は涯もなく。