フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (5)
横川 秀夫訳

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あばずれ


しばらくのあいだは
窓のあたりのよどんだ空気も
わたしたちには邪魔にはならない、
わたしたちはじっとして静かに動かずにいた

わたしの手は
扇のようにあなたの肋骨(あばら)の上にひらかれたまま
そしてあなたのは
ブレスレットのようにゆるっこく
  わたしの手首のところにひらかれたまま
わたしたちのからだは
深い性のしずけさのなかで敏感になり
幻想はあばずれごころに刻みこまれた

このひとときはわたしたちのすべてのしあわせ
おもうがままに
最高に愛しあっている事とはどういうことかとわかったり
そしてまた
そんな事をあきらめたらどうなってしまうのだろうと想ったりの
まれにしかない時間なのに
それでもなお満ちたりなくって

 

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