フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (8)
横川 秀夫訳

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私たちが提供するもの


二十一年間ロベン島に監禁した後
官憲たちはネルソン・マンデラを
コンクリートの要塞に移管した
そのむきだしの壁に囲まれた屋上から見えるものは
太陽に満ちた空だけであった

ありふれた草や木や
海を見ることもできず、海風をも失って
彼が要望したものは屋上で植物を育てるための
半分に切られた十六個の
ドラム缶であった。つばの広い麦わら帽子をかぶり
彼は日に二時間その三十二個の鉢と取り組んだ。
彼はそこからホウレン草と豆を収穫し、これを分け与えた、
続いてレタス、イチゴ、ニンジン、ナス、
キュウリ、ブロッコリー、コショウ、トマト、砂糖大根 ―
そのうちの幾つかは民事刑の囚人たちに。

私たちは私たちの持っているものを与える。彼が費やした
時間と労力の刑期である、次の六年の間。

私たちは私たちの持っているものを、持ち過ぎているものを、あるいは
私たちが作ることを楽しみとして作ったものを与える。
時には私たちは必要に応じて与える。また時には
受け取っていただくニーズにより私たちは
私たちそのものとして代用通貨を提供する。私たちには
欲望と呼ばれ、レタスの葉と呼ばれ、
また囚人への憐れみとも呼ばれる
与えられる側についての心の痛みがある。

 

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