フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (22)
横川 秀夫訳

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八月の夜


夕方のこうした歩みは -- 不変の熱暑と朦朧 
そして褪せる色彩。深まりゆく楓はその
葉の緑の長尺を深め、消散する。消散しながら
私は漂う。柵や家々も消散し。そして日々。

夜のしじまは沈みおち、吸い込むような薄墨色、
時間という光のない割れ目の中でずぶ濡れの
アイデンティティ。夏の夜にはぼんやりといらいらし。私は
日没の近くを休みなく移動し、その中に私は私の

平穏を見つけそして私の視点はさだまる。すると朝の
コバルト色に輝く海の近く、不朽の草原に
静かな小高い山々。幼い子供のころの海岸。
そこに私が発見するのは、家、ドック、緑の森、
こぎ舟 -- それら事象とそれらの名前、思い出は
それ自身の事実とともに経めぐり。私はその光を吸い込む。

 

 

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