フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (33)
横川 秀夫訳

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光の裂け目


山の背を緑に染め風に揺らぐ深い草叢の中に埋もれて
一日中私たちは太陽にかくれて光り輝きながら
キッスを交わしあったりして横たわっていた
そしてなにかしらとても本質的なものが
その丘に入り込んできて留まり
私たちをなおざりにして引き裂き
ひっそりとその雑草の間に永遠に留まるのだった。

いま事象はすべて変わり。午までに大気は澱み。色褪せた
太陽は尾根をすぎ。岩の谷間に塵は渦巻きわき起り。
夜のとばりが訪れる。石のなかにくっきりとした二つの裂けた
人影の上方に小さな月が上り、
その月の光はあまりにもカッキリとその人影を隔絶している。

 

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