ヘーテル通り
柄杓一杯の小川の水。鉄の
味。
舌に対峙する
私の口の冷たい屋根の上の引き締まった分水嶺
私はこの事を予見していた
焼け焦げた黒い樫の木の後に
マストの上から見詰める静止した鷹、 とさかの着いた垣根
そして蒼穹のスクリム織物
待つということ、単に待ちつづけるということによって
自ずとなにかを手に入れることができるのだと私は考えていた
シェードを揚げると
ヘーテル通りから
雪の光がキッチンに流れ込んできて
ぼけリンゴが流し台の上に転げ落ちた。
皺の寄ったほうれん草の葉の横にある包丁研ぎは
なめらかで蒼白に見える。
リンゴ。ラジエーターの臭い。
貴方は私に地下の冷たい水道管からでてくる水を
飲むようにと、その指でコップを持ちながら
私に下さった、
幸福そのものであったヘーテル通りに面した家の中で
ある秋の日々の私たちの生活の意識とその甘美さ、
そして、いまだそこにあって生を横切る激しい飢え、
この区域、この青褪めた石、この時間。
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