マハートマー ガンディー詩集 (1)

マハートマ ガンジー 詩集

神  よ

 我々のうち或る者は御身をシバと呼び 
 また或る者はアッラーと呼ぶ、が願わくば神よ 
 我々すべての人々を祝福されんことを 


自分と同じなかまに 
恥をかかせることによって 
自分たちは尊敬され得るのだと思う人たちを 
私にはいつも 
理解できなかった 

 私は偏屈で気まぐれで狂気である
 として知られてきた
 九分どおりそうした風評は
 当っている
 というのは、何処に行っても
 私は偏屈者気まぐれ者狂気の人々を
 引き連れているからである

臆病と暴力との間に 
一つの選択しかない場合、私は 
暴力のほうを薦める 

 私はインドが弱いからといって
 インドに非暴力を
 実践するよう説いているのではない
 自国の強さと
 力とを認識した上で
 非暴力を実践して
 欲しいのである
 その強さの実現のために
 武力訓練は
 これを必要としない

愛は決して権利を主張しない 
ただ与える 
愛に苦しもうと、決して 
不快ではなく 
また決して復讐を伴わない 

 議論するを好み
 自己の生の寄って立つ論拠に従って
 真実を主張せよ
 ひとたび真実なるを
 確信したなら、死を賭しても
 自説を撤回することは拒否せよ

非暴力は無限に暴力を 
凌駕するものであり ― 
赦すことは罰することよりも 
勇気の要ることである、と 
私は信ずる 

 純潔とは
 熱心な家で育つものではない。
 それはプールダという
 壁を張り巡らせても
 守られ得ない
 それは自らの内側に育ち
 またなんらかの価値をもたねばならない
 それはすべての見えない誘惑に
 耐え得なければ
 ならない

完全とは 
全知全能から生まれたものである 
しかし神はなんと 
偉大な民主主義者であることか 
大変な量の間違いや愚劣にも 
神は我々の側に立って悩み 
神はまた我々の周辺、我々の間 
我々の中のあらゆる原子の 
中に宿るというのに 
偉大ではない神の創造物たる人間の 
神の存在そのものに対する疑問にも 
神は悩まなければならないのだ 

 献身を欠いた
 行動と知識は
 冷たくまた乾いていて
 手かせ足かせにすら
 なりかねない

暴力は不平等によって、 
非暴力は平等によって生み出さる 

 我々が我々の反対者に
 勝利し得るのは
 憎しみによってではなく愛によってのみである
 憎しみは
 暴力の最も狡猾な形であり
 憎しみは憎む人を傷つけるが
 決して憎まれる人を傷つけはしない

彼らは私の身体を拷問にかけ 
骨を折り私を殺すことさえするかもしれない 
結果、彼らは私の屍骸を手に入れても 
私の服従を手に入れることはできない 

 最善の意図にも
 かかわらず
 人は
 間違いを犯すに
 至るが
 彼らは実際には世界に
 或いはそのことによって
 如何なる個人にも害を
 及ぼす結果には至らない、と
 私は信じている
 神を怖れて
 生きる者の
 意図せざる失敗の結果から
 常に神は世界を救うのである

苦い経験から私は
すべての寺院が神の家ではない
ということを学んだ
それらは悪魔の
棲家たり得るのだ
こうした崇拝の場は
それを守る人が神の善き僕でなければ
何の価値もない
寺院やモスクや教会は
人間が作った
形骸にすぎない

不可触民制は
古代の伝統であると
考えられているかもしれない
幼児寡婦や
幼児結婚の
制度は
古代の伝統であると
考えられているかもしれない
また数多くの古代の
恐ろしい信念や
迷信深い風習
もし私にその力があったならば
私はそれらの
存在を絶ち
一掃するだろう

神のみ名によって
非人間的な残忍行為
或いは空恐ろしい背徳が蛮行され
神はその存在を止めることはできない
神は長い間悩んでいる
神は辛抱強い
が、神はまた恐ろしい
神は現世界でも
来るべき世界でも
最も厳しい存在なのだ

富める者は貧しい者よりも
はるかに満足することができない
貧者は百万長者になり
百万長者は
億万長者になるだろう

我々のための宗教が今日
食べ物や飲み物に対する
制限以外の
何者をも意味をせず
優越と劣等という
感覚に
拘泥する以外の何者でもないということは
悲劇である
これに増した
赦しがたい無知は
あり得ない

現実的な事柄を
考慮に入れず
そうした事柄の解決を助けようとしない
宗教は
決して宗教ではない

私は
卑しむべき人物であるかもしれない、が
神が私を通じて話すとき
私に敵はない

不可触民制は
砒素毒ミルクの
滴りのようにヒンズー教を毒する

仕事や食べ物のない
五体満足の男女が一人でも
いる限り
私たちは休息や
中身のある食事を摂ることを
恥とすべきである

我々が我々の隣人 ―
人間や動物に
適用すると同じ尺度を
神は我々に適用する。
神と共にあって
無知は言い訳にはならない
そしてすべてのものと共にあって
我々に悔い改める
機会を与えているが故に
神は赦しつづける

人間は誤り易い生物である
祈りへの回答であるとみなしたことが
自尊心のこだまであったりして
人間には己の歩みを
確信することができない
誤りのない導きを得るため
悪魔の付け入ることのできない
完全に無垢な心を
持たなければならない

神は神が選んだ人に
その存在を明示する
権利を
留保してきた
神には手も足も
他の器官もない
存在である、が
神は神自身を
顕現したいとする人に
その姿を現す

たとえ親友と共に
実行することが
できなくとも
人生には行動しなければならない
時がある
為すべき事柄に
対立が生じているとき
汝の内なる
「未だ小さな声」が
いつも最終的な裁定者で
あらねばならない

独身学生期修業者としての
当然なしきたりとして
女性とのすべての接触は
忌避されねばならないとすることを
私は信じたことがない
すべての異性との
接触からの回避を
要求するあの束縛は
それが極めて無知なものであったにしても
強制された結果であり
殆ど或は全くに重要な価値のあるものではない

神は優勢あるいは
劣勢というバッジをつけて
人間を作ったのではない
彼あるいは彼女の生まれの故に
劣等あるいは不可触
としてレッテルを貼る聖典は
我々に忠誠を要求することはできない
それは神および
神たる真実を否定するものである

神は世界中が知るところの
最も偉大なる民主主義者である
というのは、神は我々の
足に箍をはめることなく
善と悪との間での選択を
我々に任せているからである

神の音楽は
絶え間なく
我々の内部に流れている
が、粗野な感覚は
我々の感覚で知覚し
聴き得るなにものとも似ず
無限により優れている繊細な音楽を
掻き消してしまう

私は未来を予見することを
欲しない
私は現在を管理することに
心を遣っている
神は私に
来るべき瞬間を
制御することの使命を与えてはいない

物事を大目に見ることは
必ずしもそれを容認することではない
それが寛容の意味するところである
私は心底、飲酒や
肉食や喫煙を嫌悪する、が
ヒンズー教徒、マホメッド教徒そして
キリスト教徒の為すところにおいては
私はこれらを容認する
尤も彼らは私がこれらのすべてを
慎み断っていることを
嫌うであろうけれども

何百年も前から
さまざまに
男性は女性を支配してきた
それ故
女性は劣等感を
募らせてきた
女性は男性に劣るという
男性の興味を持つ教えを
真実として女性は信じてきた
しかし男性の中の預言者たちは
女性の平等な地位を
認識してはいたのである

真理は
すべての人間の心に内在し、人は
その心の内に真理を探求しなければならない
そしてその真理を見つけたなら
それによって導かれなければならない、が
自分のみの真理の見解に従って
行為するよう
他人に強制する権利を
何人も有するものではない

ある意味では我々は泥棒である、と
いうことを私は示唆する
もし私が自分自身のために
自分が直ちには必要とはしない
何かを取り
そして保持したとしたら
私はそれを他の誰かから盗んだことになる

秘密裏であれオープンであれ ―
自由恋愛を私は信用しない
自由でオープンな愛を
私は犬の愛である、と
見なしてきた
一方、秘密裏の愛は臆病である

地球上には一つの宗教のみが
存在するであろう或は存在し得る、という
信仰心に私は同調をしない
従って私は共通要素を
見つけ出し
相互の寛容性を導入することに
力を傾けている

 

戻 る     続 く