マハートマー ガンディー 詩集 (5)


 

妻は夫にくっついた
奴隷ではない
夫の相棒であり
手助けをする連れあいであり
対等のパートナーであり
嬉しいときも悲しいときも
夫と同じく
自分自身の道を選択できるのである

読み書き教育それ自体は
道徳の一インチをも
高めはせず
性格形成は
読み書き教育とは
別物である

一人の人間を軽んずることは
神の力を
軽んずることであって
人間のみでなくその一人の人間と
世界全体とを害することになる

我々は我々の演説や
我々の書物によって他者をして
思想的転向をさせる必要はない
我々がそうすることができるのは
われわれの生活によってなのである
すべての人々が学べるように
我々の生活を開かれた本と為そう

生は熱望である
その使命は
自己実現の
完成を求めて力を尽くすことである
我々の不完全性
あるいは弱さの故をもって
この理想を低めてはならない
私は私のなかにある両者について
痛いほどに気づいている
私の不完全性と弱さとを
取り除くのを
手助けしてくれるよう
私の無言の泣き声が毎日
神に向って為されているのだ

私の生に対して過去に
暴行が行われた
しかし神は現在に至るまで私を助命してくれ
加害者たちは
自分たちの行為を悔やんだ
けれどもしも
自分はごろつきから足を洗うのだという
信念の下で
何者かが私を狙撃するとしたら
彼は本当のガンジーを殺すのではなく
彼にとってならず者に思える人を
殺すということになる

西からくる
光によって
我々が利益を得ることを
妨げるものは何もない
ただ、西のうっとりさせる魔力に
圧倒されないように
気をつけなければならない
我々はうっとりとする魔力を
光であると勘違いしてはならない

真の芸術家にとっては
外貌からまったく離れ
魂のなかの真実によって
輝く顔こそが
美しいのである
神から離れて
美は在り得ない

神の知識を
書物から借りることはできない
それは自分自身の内に実現されねばならない
書物はせいぜいが手助けであり
しばしば妨げですらある

私は神の絶対的唯一性を
信じている、従って
人間性もまた絶対唯一である
我々には数多くの
肉体があったにしても
我々はただ一つの魂しか持ってはいない
太陽の光線は
屈折を通じて
たくさん存在する
しかしそれらは一つの源泉しか持たない
従って私は私自身を
邪悪な魂から引き離すことはできず
また、最も高潔であることとの
同一性を否定することもできない

如何なる妥協をも認めない
永遠の原理というものがあり
そのために人は
そうした原理の実践のなかに
自分の生活を置くことを余儀なくされる

世界の聖典によって
支持され得る場合があったとしても
失敗は例外を主張することはできない

真実のないところ
真の知識は
あり得ない
知識あるいはChitという言葉が
神という
名前と関連しているのは
この為である
また真の知識の
あるところ
常に恵み(アーナンダ)がある
そこには悲しみはない

潔癖は信心に
隣りあわせている
不潔な心よりも
不潔な肉体を以ってしては
神の恵みを
手にすることはできない
不潔な都市に
清潔な肉体は住み得ない

聖典は
理性と真実とを超越し得ない
それは理性を純化し
真実を光り輝かせるように
意図されている

真実を追求する者にとって
沈黙はおおいなる役立ちである
沈黙の姿勢のなかで
魂はより澄んだ光のなかに
小道をみつけ
理解に難く人を誤り導く事柄は
水晶のような明快さのなかに
解消する
我々の生は真理たる神を求めての
長く険しい探求であり
全き高みに至るために
魂は内面の平穏を
必要とする

私は自分の使命は
困難な状況から
人々を救うために
あらゆる場所を
彷徨する騎士のそれであると
思ったことはない
不肖私の仕事は
人々が自分自身の難事を
どのように解決し得るかを
示してあげることであった

沈黙は
真理崇拝者の
精神的修養の一部であるということを
私は経験から学んだ
意識的にしろ無意識的にしろ
真理を修正しまたは隠蔽し
あるいは誇張するという性癖は
人間の自然な弱点であり
沈黙はそれに打ち勝つために
必要なのである

それが様々に普及しているから
という理由を以って
誤りは真理になり得ないように
誰にもそれが判らないからといって
真理はまた誤りにはなり得ない

真実と正義よりも
より高い宗教は存在しない

真実とは巨大な樹木の如きものであり
育てれば育てるほどに
より沢山の果実を
生みだす
真実という鉱脈を
深く探求すればするほど
より大きく様々な
奉仕のための
機会という形で
そこに埋もれている
多くの宝石を発見する

私は真実の中にあるいは真実を通じて
美を見る
単に真実な理想のみでなく
真実の表情や
真実の絵画や歌といった
すべての真実は非常に美しい
人々はともすると
真実の中の美を見逃す
普通の人は真実の中の美から逃げ出し
真実に対して盲目になる
真実の中にある美に
気づき始めるとき
本当の芸術が立ち上がるのである

神だけが人の心を
知っている。それ故
最も安全なことは
生きていても死んでいても
どんな人をも崇拝しないことである、が
神の中だけに在る
完全性を崇拝することは
真実と認められる

神は直接に罰することはしない
神の手段は計り知れない

援助に値する公共施設が
支持を欠いたがために
消滅することは絶対にない、と
私ははっきりと確信している
消滅してしまった公共施設とは
社会に対し
自己を推挙するものを持たなかったか
または指導者たちが
信頼をなくしてしまったということか
あるいは多分同じことであるかもしれないが
スタミナをなくしてしまったからである

神聖な主張のためには
決して敗北を認めてはならない
これからは
貴方は純粋であって
神からの返事を手にすることを
心に決めよ
しかし神は
傲慢な人の祈りや
神と取引をしようとする人の祈りには
決して答えはしない

日々の祈りの結果として
人は自分の生活に
何かしら
何ものにも比較し得ない
何か新しいものをつけ加えるということを
すべての人に試みさせ知らしめよ

最も不純な
祈りですら
答を得るであろう
私はこのことを
私の個人的な経験から言っている
私は煉獄を
くぐり抜けてきた
最初に天の王国を
求めよ
そうすればすべてが
貴方に加護されるだろう

信心深い良い意味での努力は
決して無駄にはならない
また人の成功は
そうした努力のなかに横たわっている
結果は神のみ手の中にある

神は非常に厳しい先生である
神は決して花火の誇示に
満足はしない
神の工場は
確実にまた絶え間なく
粉引くが
ひどく苦しめてゆっくりと粉引き
そして神は
生命の性急な喪失には
決して満足をしない

神の無限の慈悲を
疑う人があれば
その人に聖なる場所を
見させよ
ヨガの行者の大御所は
神の神聖なみ名において
どれほどの偽善と
反宗教とを
犯したことか

人間性が泥沼に引きずられていくのを
見ることは
私にとってまた他の誰にとっても
愉快なことではあり得ない
もし我々が皆
同じ神の子であり
同じ聖なる根底を共にするならば
その人が我々に属そうと
他の人種に属そうと
我々はすべての人の罪を
共にしなければならない

私のそれは
獄舎の宗教ではない
それは神の創造物のなかで
最も微細なものにも場所を提供する
しかしそれは傲慢、民族の誇り
宗教または肌の色に対して
無敵の保護者である

「取り囲む暗闇のまんなか」を
明るくすることが私の道であると
感じながら私は生きている
私はしばしば過ちを犯し誤算をする
私の信頼はもっぱら神のなかにある
そして神を信頼するが故に
私は男のみを信頼する
もし頼るべき神を持たなかったなら
私はティモンのように
人間嫌いになっていたであろう

真実は
心の一要因である
それは理性によって実施されなければならない
これら二つは人が考えるように
相容れないものではない
真実が強烈であればあるほど
それは理性をより強く刺激し
真実が盲目となるとき
理性は死ぬ

私が死んだ後もしも何者かが
行列のなかの私の体を盗もうとしたら
―もし私の死体がしゃべれるとしたら―
私の死んだ場所で
私を容赦し荼毘に付せと
私は確実に彼らに言うだろう

私は自分の身体機能の
敗残者のような
のろのろとした麻痺によって
死にたくはない―
暗殺者の弾丸が私の生命を
終らせるかもしれない
私はそれを歓迎する
しかしとりわけ私は
最期の息を引きとるまで
自分の義務を遂行しながら消えていきたい

世界のすべての
宗教的教師から
寄せられる真実のメッセージを
私は信ずる
自分への中傷者に対して
怒りの感情を持たないように
また自分が暗殺者の弾丸の犠牲になろうとも
私の唇への
神の思い出と共に
自分の魂を高揚することを
私は常に祈っている

最期の瞬間に
私の唇が
私への加害者に対して
怒りの言葉をあげののしるならば
詐称者とけなし書きされても
私は満足だ

もしも私が狂人の
弾丸によって死なねばならないなら
私は笑ってそうしなければならない
私のなかに
怒りはないに違いない
神は私の心と唇とに
いるに違いない
そして君よ一つだけ
約束してくれ
万が一そうした事がおこったなら
一粒の涙をも流すな

一九四八年一月二八日



そしてその最期の言葉

へ ラーム (神よ)

一九四八年一月三〇日

 

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