序章   あなたの魂 (ユリギス・ブレカイチス)   霧の中 (ヘルマン・ヘッセ)  パルチザンの葬儀 (ジョナス・アイスチス)
第 1 章 | 第 2 章 | 第 4
 | 第 5 章 | 第 6 章  | 第 7 章 | 第 8 章 | 第 9 章 | 第 10
11 章 | 第 12 章 | 第 13 章 | 第 14 章 | 第 15 章 | 第 16 章 | 第 17 章 | 第 18 章 | 第 19 章
第 20 章 | 第 21 章 | 第 22 章 | 第 23 章 | 高村 光太郎
特集 | 萩原 朔太郎 特集 | BACK TO INDEX

次のペ^ジへ

第 7章  「人間の歴史」・三部作  

武者小路 実篤 詩  
 松本 いすみ 朗読
 
 
 過去の人間

 過去の人間よ、
 君達が地上にのこした
 働きのつみかさなりを
 我等は喜びをもって
 生かしたく思っている。
 君達は苦しい処を
 よく生きぬいてくれた。
 そして地上に
 いろいろの仕事を仕出かしてくれた。
 それは一朝一夕では出来ないことだ。
 あらためて君達に感謝する
 君達の苦心、血、
 労働、愛を
 無意味に消えささないつもりだ。



我等は

 我等は
 過去の人間から受けとったものに、
 我等の精神と労働を加味して、
 未来の人間に渡すものである。
 出来るだけよくして渡したい。
 
未来の人間

 未来の人間よ
 君達こそ人間らしく生活してくれるだろう。
 愚かなことをくり返さずに
 幸福に生活してくれるだろう。
 すべての人が喜べるよう
 働いてくれるだろう。
 
 未来の人間
 我等のまいた種をかり入れる人間。
 出来るだけよき種を
 我等はまけるだけまきたく思っている。
 よろこびをもってとり入れてくれ。
 
 未来の人間
 君達を他人とは思っていない。
 君達こそ
 大きな仕事を
 地上に完成してくれる人間だろう。
 人間の栄光の為に働いてくれ。
 人間らしくよろこんでくれ。
 君達
 未来の人間。
 

 



武者小路実篤 (1896〜1933)
出典: 筑摩書房刊 伊藤信吉編
「鑑賞現代詩 II」