あの年の八月に


あの年の八月、私は気が狂うほどであった。

    ハサミとしてあるいは
    銀髪のためのカールクリップとして役立つ
    色鉛筆はなかった。

        深く積った雪の上を
        半風子をたけたトルコ人たちと
        ドイツでのレッスンへと
        行くための橇はなく、

            幾つかの精神を興奮させた
            足がかりという幻想と
            見事に引き渡された境界線と
            そして涙と出発とで
            あの年の八月はひどい月だった、

                あの年の八月は悲しい月だった。

戻 る               次 へ