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第2章 自然 (13)

武蔵野逍遥


鉛の雨雲

全面

天蓋
を閉じ

春まだき

咲かず


畑の土は
真っ黒の

肥沃


雑木林は茶色に煙り
無数のねじれ針金の屏風となり

さきがけの火事桜

濃く煮えるワイン・レッドで五本六本


なんだ、あれは
しだれ柳の

まるっきりの萌黄色


裸の欅の巨木の手前
竹の群の密生は

常緑の繁みの

みずからの重たさに耐え


肩からザックリ片腕斬られなを 
メタセコイア

轟然と聳え


れんぎょうのマッド・イエロー
もくれんの熱帯ホワイト

雪の下、処女のはなやぎ


こでまりは
これからが娘盛りか


汚きは
だんだらの椿の散りざま


ボケの冴えた
紅白の饗宴


時、まさに
美の歓喜の

猛烈な大爆発の

重っ苦しく息づまる

春の直前