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第5章 長編叙事詩 (5)

ゴータマ・ブッダ                              第6章へ
 


 バラナシの日没 (伊藤 泰助)

終章 ニルヴァーナ

解脱し悟りを得たゴータマはマガダの国へと向かった行きかう人々はすべて無明のなかにあった。 ゴータマが自分の得た境地を説くのに人々は無明でありすぎたゴータマは理論の体系を持たなかった。 ゴータマはその教えを説こうとはしなかった

出家したころ共に修行した五人の旧知のともがらに出会った六人で話した。 ゴータマは四つの真理について語った五人の修行者は直ちにこれを理解しゴータマに帰依し随行した。

森のなかで途方にくれている三十人の男と二十九人の女たちに出会ったゴータマは静かに彼らの訴えを聞き、四つの真理について語った落ち着いて静かな ゴータマの言葉は五十九人の男女の心のなかに浸みこみ、それぞれの心なかで 育まれ醸成されて行ったゴータマ・ブッダの教えは静かにしかし着実にひろまって行った

聖人たちの集うサルナートでゴータマは四つの真理と更に八つの正しい道について説いた教えは広く伝わるに至った マガダの国王ビンビサーラもゴータマに帰依をした。教えは更に広まるに至った

早朝に托鉢の行をなし、一日に一椀の食事をとり、結坐して瞑想しなお修行に励みながら六人の修行者の旅は続いた彼らの目的は説き教化することではなかった。 彼らはいたずらに法論を為すことを好まなかった彼らの旅は修行であると同時に宗教の相違を離れ民衆一人一人の心の悩み と苦しみとを救うことであった

二十九歳で出家して、何時しか五十年の歳月が過ぎていた。アーナンダがゴータマに言った。 「ゴータマよ、君なきのち、我らは如何に為して行くべきか。」 ゴータマが言った。「友よ、案ずることはない。形あるものは必ず滅びる。私は自己に帰依をしたけれども我らには四つの真理と八つの正しい道がある更なる思惟と修行と共に、この法と律とに従って行け。」

ゴータマは五人の修行僧と共にその生誕の地ルンビニーを目指した。途中クシナーラで ゴドータマは体調を崩した。紀元前483年、ヴァイシャーカ月の満月の日であったアーナンダは小高い丘の上の沙羅双樹の下 に床を設えた。ゴータマは横たわった悠か彼方の地平線がくっきりと望見された。垂直に立ち上がる ゴータマの目線と地平線の交わる点のなかに.出家したヤショーダラと息子のラーフラの姿を ゴータマは見た

点は無限数のゼロを包含していた距離 はまたゼロであった太陽の末裔に悲しみ の涙は禁物であった二人は静かに微笑み合掌しゴータマに祝福と別れの挨拶とを送ったゴータマは目を閉じ八十歳の生涯を終えた

< 完 >

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