川の側を女が歩いている風景


 
南国の暖かなある日。
 
密集したオレンジの木々はその芳香を放ち。

 
水の下のフルート曲。
 
花咲くリンゴの木。

 
バラ園の凸レンズに、
 
ボートは漂う。

 
     あなたは行ってしまい、
 
     世界中のすべての花々は
 
     ユリの花に変っていく。

 
ユリの花々の豊穣。藤色のビロード上に
 
描かれたスイレン

 
     あまりにも多くの願望。
 
     また会ってサンザシやアメリカ フヨウ
 
     について語りたい。

 
彗星の明るい夜、コバルトの鐘。
 
星々を舐めるイトスギ/黒い炎。

 
     私のものではないこの家の後の
 
     壊れた時間に
 
     ほんとうの果樹が花咲いている。

 
雨は屋根の天辺で悲嘆にくれ。
 
バラの木はその小さな手を差しあげる。

 
夜の川の深みで、
 
水は炎と燃えあがり。

 
     チドリが鳴く
 
     あの川の浅瀬、
 
     貴方の馬はしぶきをあげ
 
     その澄んだ水をかきわけ
 
     いつ私に会いにくるか?

 
私は貴方と一緒にいる自分の姿を赤い鏡のなかに見る。
 
これから二十年たった後に私はその鏡を
 
その中に私たち二人が一緒にいる鏡を見るでしょう。

 
         最も高い暗闇のなかの絶え間のない星の変遷。
 
         ガテマラの木々から葉は落ちつづけている。

 
  まるでなんにも変りはしない。

 

戻る      次 へ