レンギョウ

「つかの間の生にかかる小道に沿って行く」 
ロバート J.レヴィー


摩擦音に満ちたエネルギーフィールドの三月。長い
川面に滑る年月。

鐘状花冠に咲くレンギョウ。煮えたぎり響きわたる黄。
青い電撃的な夜。

ナシの花の白いあぶく。思いだせ
二十歳のころのダイヤのような絹肌を。

ヤナギの葉の緑の刺。サボテンの木立のなかミソサザイの
竪琴。なぜ彼女は私たちを責めるか? 彼女はなにを知っているか?

黒曜石のインクで自己の生を書き記せ。



春の初日、太陽の黄金を濾過する寒い風。
深夜すぎに落ちてくる黒い雨。何処?

カフェの上、アルレスのなかに金剛砂の星々は飛び散って開く。
シリウスは生気に溢れて生きいきとしたイエローブルー。

白いアーモンドの花。盛んなアーモンドの茎。
歩くカップルの風景と鎌の月。



根源に戻ることは暗闇に落ちること
ピンクのヒヤシンスの素的な匂い
そして光はまた輝き
黄金をしたたらせるレンギョウの枝々
トウモロコシ畑に記された宝石彫刻術を読み学べ
大気の萎縮した青、ニームの青

 

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