フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (1)
横川 秀夫訳

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竜安寺


池は石のように静かに楓の木々を映し
小径がそれに続く ―
池に写った木々の百態。葉は ― 血の赤、
炎の赤、緋、深紅色、緑、
真鍮と銅と金 ― 全くに同じ
風景と和して浮動し漂う。
その池を過ぎ広い廊下。

静寂は石庭に満ち。
踏み段の平面から見る
静謐な精神のみが観察し得る石と苔と
熊手で掻き均された礫、何事をも考えず
不変の瞬間(とき)の中に入りこむ。

折り重なって不動の滝は
円形の薄紫の砂場に映え、
灰色の礫の溝は島々を繋ぎ
その平坦な境界は水を表象する。
小さな屋根と石板色に縁取られた
低い塀壁が空間を取り巻く

これとまったくに同じ
思想、他のイメージ、
あるいはギリギリの幻想、あるいは
筋の通った言葉を私は知らない。陰と陽とが
本質的な単色画に交差し。
静謐。濯ぎおとされて生命(いのち)は立ち上がる。

 

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