フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (6)
横川 秀夫訳

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沈黙 (しずけさ) について


アイエアの森の繁みをとおして
シトロン樹の緑の翼の熱気と雨色の光をまきちらす
マジロ鳥、
私たちはそれらの森の繁みによって守られ
震えおののく恐ろしい時にもそれらに頼ってやってきた。
私はまた、あなたが私に持ってきてくださった
たくましい百日草や
紫色のブロッコリーの若木たちを信頼します。
すべてがなんという静けさで育つのでしょう。


必要にかられ、誰にも知られずドラッグに酔い
深夜、明るく澄んだ月と共に輝く
深い花弁のセレウスの花を見つける。
包んでいた静寂は大きく破れ、
純白の輝きの消えることはなかった


深い草に埋もれているあの丘のあたりに記された
荷物を積んだ幌馬車がたどった道跡、
この大地がその車輪にゆっくりと刻んだ事柄につき
私たちは知っている、が
私たちはそうしたことについてしゃべる必要はない。


思いもかけなく、ごく自然に
夕暮れ時にカナディアン・ギースたちが
茫漠(うつろ)な平原に舞いおりるように
しずけさが私のなかにやってくる、と
あなたは言った

 

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