流れ去る川・一九二四年
彼らはその平底ボートを泥まみれの岸に向かわせた、
夫婦もの ―
そして暗く、移ろいゆく月から注ぐ明るさの中で
蒲の立ち木に低くボートを繋いだ。
黒い水面に銀を撒き散らしゆれる
粗野な星々の下
湿地はやぶ蚊と共に歌っていた。
その男が凝視しつづける
これは追いはぎの国。
彼は煙草をふかす。彼は平穏だ。
この暮らしはこれで良い ― 陽が登ると出港し
そして暑さの中で一日中流れに船を航し、
あるいは濃むらさき色の雨の中では岸辺ですごす ― 幽霊
誰も我々がここにいることを知らない。
彼は微笑み、ナイフに手をのばし、相棒の月に笑う
つまり、俺は今は船乗り、俺の親父がこの土地を耕した
細君は男が修繕した打網の下で身をよじらせる、
けれども彼女は目を覚まさない。不機嫌な女。
昨夜はあんた騒々しいラバみたいにいびきをかいていたわよ、と彼女は私に言った
まあなんてこと、なぜ彼女は悲嘆に暮れるのか。
高貴な男の蒼ざめた孫娘よ?
彼女の黒髪は輝き、カラスの翼、降る星の夜。
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