フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (15)
横川 秀夫訳

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ヘルミオネ


すでにまた冬。木々は裸。
まったくに静かなみずうみは
夕暮れの光の反射にあふれ。大気だけが
ふるえ、雪のふりだしそうな
けはい。私は寒気にくじけ、年月が
もたらしたものは何であったかに気づき、心に銘記し、

うす暗がりのなかにときはなちます。澄んだ水は、
曇天を映しながら
くらい生活をおしかくし。胸に秘め破滅した悲嘆のさけびが歌に
かわりうるように、くらい生活は魔法の水晶玉をとおして太陽をひきよせ
変えてきました。そしていまは、沈黙。
けれどもなにか明確なものがあります ― 存在 (プレゼンス)

ふる星の核から放射される
ふるえるきらめき、光線。
最初はほのかに、火がともり。待ちすぎるほどに、
待ちました。そのおとづれを信じていたとおい時間は
湖辺にはえる太陽の黄金のかけら。たたづまなければなりません ―
やってくるのだから。誠実 ― 約束ごととはなんの関係もないもの。

私はすでに誓約とは見すてられるものの最たるものであることを
知っています。だけど誠実は見すてられはしない。
かくれて横たわり、いま冬を耐えて生きる
その草 ― 雪がとけてのち、おのれ自身の強い意志によって
回帰へとみちびく、自由にいとおしみ愛しあう、すべてのもの。

 

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