フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (18)
横川 秀夫訳

BACK        NEXT

 

共 生


野生の恋人たちが動物たちの隠れ場所をみつける

その唇はほほえみでゆがみます、
松の森ではひそやかな落ちた針葉の下に昆虫たち
を、また
石の下にみみずたちを偶然にみつけ、
激しく疾走し身悶える生命たちが
避難場所に戻るのをみとめると
ほっとします。
野生の恋人たちは無感覚な石ころや
朽ちかける材木や覆う葉っぱやほら穴などをもその
ままにしておき
何者をも傷つけるはことしません。
野生の恋人たちは さざなみの立つ流れの浅瀬でじ
っと動かずにいる
まだら色の鱒を見つけてもそのこころの静けさをか
き乱すことはしません
また、コヨーテたちが薮の中で狩をしたあとで横た
わった
おしひしがれた草むらをもみくちゃにするようなこと
もしないし、
ブユムシクイやツムギモドキやミソサザイなどが
サボテンの木に作った巣をとり壊すこともしないし、
ガラガラ蛇が眠る
温かな岩盤の上を踏み荒らすことなどもしません。

私たちには野生の恋人たちが私たちを承認してく
れていることがわかります、
そして私たちが野性化しさらにその野性化を強めて

飢に狂ったオオカミのように獰猛になったとしても誰
も私たちを傷つけることはないのです。
私たちは、野生の恋人たちがまろやかな水をたた
える秘密の泉をも隠そうとはせずに
困惑しながらも私たちにほほえみかけていてくれる
ことを見てきました
野生の恋人たちは誰にも知られることなく、注目さ
れることもなく
あるいは深い澄んだ井戸の中にあって、すべての
よろこびの根源として存在します。

 

BACK        NEXT