フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (19)
横川 秀夫訳

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友人同志


隆々とした夕暮れの空の下
嵐は将に襲来せんとする中、
ガクガク踊る船に揺られ、二人の漁夫が
せりあがる海面の立て揺れの傾斜に網を打ちなが
ら作業をしている。
全面、鉄と鈍い銀の色彩の中
網にかかった獲物を引きずり上げようと格闘しなが

互いに何事かを叫んでいる。
雨は湾曲する水平線を掻きっ消し
防水服をバラバラとはためかせ疾駆する突風の中
あらくれの雲は亀裂を生じ。
襲い来る風に身を屈め
一人の漁夫は目を天候に注ぎつつも網を引く。
二人の漁夫の信頼は互いの腕前に宿し
両者の腕力は大きく広がり、あるいはかろうじて耐
え、また引き合い。

濡れた顔で、にやりと笑い。
大西洋に取り組んだのは彼らにとってこれが初め
てではなく
後には、サイクロンのような緑の黄昏の空の下
またこれは最後の漁でもなく。
彼ら相互の信頼は確固として
またありふれたものでもあり。
降りしきる雨の中、冷たい海水の上
彼ら二人、働き生きてそこに在る。

 

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