フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (24)
横川 秀夫訳

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「雪月花宿」 ー 横川秀夫よりの贈り物


「この文字はどういう意味なの?」
「雪。月。花。
    宿れかし。」
         「まじりあっているということ?」
「動詞としては本質的に結合している。また宿すってこと。
名詞としては宿とか家とか。」

気持ちのよい夏 年月は過ぎ去って
丘の中腹にぽつんと建つこの宿は
一夜の中、その内側にぴったりとからみあった
すべての季節を蔵し

本質的に、冷たい光と
静寂によってくくられた白い画面
そこに置かれた黒い表意文字の趣
幻影と吐息によって形作られたヴェール
                  
一枚の水気をふくんだ蓮の花弁が
鶴の綿毛よりも軽く
月の光で
凍てつく雪のなかに横たえられ

一体となった本質だけが
悲しみという空間と
季節を分割し 月の入り ハイビスカス
白く清らかな平原の上のきらめく深紅色

 

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