フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (26)
横川 秀夫訳

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ひとり新地アイナホウにて


私はもうあなたの名前を口にはしない。
オヒアの木々が牧場の草叢から聳え立つなかを
日の出の時刻に私が道を歩いているとして ―
風が灰にまみれたわき道を襲い
誰にも独力で引き返すこともできないそんなとき ―
夜の雨で
梱包用の針金の束やその間にかかった蜘蛛の巣や
そして柵用の皮をむかれた丸太の材木が濡れて光り
また農場のすべてのものが雨にあらわれて光り輝き
石やその上に生える地衣植物、溶岩の塊、
タンク、パイプ、ベンチ、離れの別館 ―
すべてが雨に濡れていて、私は身震いし、
太陽が上りはじめる、
けれども私は戻りはしない。
私はあなたの名前もすら口にはしない。

 

 

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