フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (27)
横川 秀夫訳

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ローマの南からの手紙


このごろの夜は ― まるで変化がなくって。
私にはもう我慢ができません。この手紙を書き送ります。
夏にはもううんざりです。
あまりにも幾百もの夜、私たちはたがいに同じ国の中にいても
ローマと星との間よりもはるかに
遠く離れて生きてきました。
夏と冬の陸路での旅は困難で
旅は幾度も延期されました。
この悲しみは私たちだけのものです。
ナイフやランプやジャーやではなく、貴方からの贈り物は
私がそれらに触れてみても、もはや私を慰めてはくれません。 無言なのです。
私を守ってきてくれた銀のお守りもです。
おそらくは、私たちが黒ワインを飲んだときに
貴方と私との間を往復した酒杯ですらもです。
星の光の下で私が注ぐワインはきらきら光っています。
花柄の貼りつけられた
なみなみとしたグラスで飲みながら
その大杯の台座から見つめ
青い瞳を見ています。

星のきらめく夜。
暗くってこれらの文字がこれ以上読むことができませんでしたら、
この私の手紙をたたんであなたのコートの中にしまって下さい。
私がここで飲むワインは
あまりにも黒いために星々はかえって近くなっていますから
貴方も北方のプロヴィンスの廃虚で飲むことを
怖れないでください。

 

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