フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (31)
横川 秀夫訳

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身のまわりの品々
for Hideo Yokokawa


私の望んできたことは
たとえば、本で埋まったこのライム・グリーンの図書館や

いぼたの木をとおして濾過された陽の光やあるいは
カエデの木から落ちてくるこうした木の葉たちや

私のねがいやを、人のつながりの中に引き戻すことだけでした。木の葉たちは私の足下で
まあ、なんですって? やすっぽい飾りですって? とおしゃべりをし、明るい。

あるいはモンタルジーのグランド・ピアノの横に置かれた壊れたウクレレ。
それらはそれら自身をもの語り。あるいは私にとっての私自身。

あるいは無。
私は更なるものを欲した。
ことば。
秀夫は私にどのようにして悲しみは

血のごとく水のごとく地の底から湧き
上昇し乾いた地表の間隙ににじむかについて語った。

愛し合っている男と女は愛以外の生活を望みはしない −
それで十分だ、と私たちについて記したマイケルは間違っていた。

(「我々は単に家や橋や泉とかについて語るためだけに
     此処にこうして居るとでも言うのかい?」)
私は身のまわりの品々を取り戻したいとねがって来た。詩。人のつながり。

 

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