フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (39)
横川 秀夫訳

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ドラゴンの息


様々な声により何百もの言語で、
見事にあるいは稚拙に、声高に呟かれる物語や
あるいは印刷され製本された単行本であったり全集であったりの
古い文献を私は渉猟します。
                  洞窟の外の草々を枯らし
からみつく蛇を食らうドラゴンの息
その同属は緑したたる森の中に眠り、衰えた君主たちを
窒息させます。けれど、いつもベーオウルフがやって来て
瀕死の領土を破滅から救い、ドラゴンを殺します。

私が探しているものはこうしたことではなく、私が求める結末は何かしら
最終的な解答としてちょっとした、けれど他にないような変革です。
ある怪物が顔を殴られておとなしくなるのではなく、少女たちが
戦士になるのではなく、「長靴をはいた猫」ではなく、また英雄でもない
より良い結末をもった物語を私は好きです。
大地に火ぶくれを作るあのドラゴンの息のような
リアリスティックな書物を私は漁り続けています。私は
ともかくも適切ではないところの
ドラゴンの死とはなにか別の結末である
私が理解し得ない事柄に対する解答を切望しています―運命論。
ことばは私にことばを語り続け
ことばはあらゆる生き物のはじめでした
そしてドラゴンの死が結末なのであれば、私は
その結末を知りたいと思います。
                     ことばに戯れながら
私は希望を放棄し、ドラゴンの息を
押し進め、自己に与えられた事柄を保持し、洞穴の中の
宝石を忘れ、炎の影の中に住み、ドラゴンの息を呼吸します。

 

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