四月なかば
サイカチの木
鶴の巣川沿いの四月 |
ブリザードのなかの町 暗い嵐に打ちひしがれた石の町 電気プルートの音の純粋な湧きあがり ガラスのように輝く金色の球体、二十日大根の葉 夜のとばり、雪と種の球 赤みがかって気だるく巨大な 窓の金色の隙間から光はこぼれ
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彼は旅費のかわりに オパールと砂金石をたずさえてこの町にやってきた 彼を男とも女とも思うな、四つの音程として考えよ なぐさめよりも重たい物がある 春の雪のなかで咲く桃の木 スノーグラスの原野 白い木と白い葉っぱの木立 ほら穴の口には 風も黒水晶もな い 埃っぽい夏に落ちかかる雨 炭素の心臓をもった町 蒼白がかった深紅色の根を持った木々 亜鉛のオーボエが鳴っている 遠くにある川の銀色 凍った雨の下の氷の川 籠のなかの古びたカワウソの皮のように大気は陰鬱 |
名もない礼拝の歌を歌い 未来を占ってもらうのに彼は三つのオパールを支払った 表情を変えない深く輝く眼をもった 猫の顔を誰が読むことができるか 太陽の白い縁から芽吹く星の炭素 彼女は彼が死ぬであろう日付を 告げようとはしなかった 読者はこうした世界を何と呼ぶか
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