標題の 「雨ふるさとをはだしであるく」
は言うまでもなく、山頭火の句であります。たまたま、インターネットで短歌と俳句の翻訳について考えるところがあり、こうしたッジャンルのサイトをサーフィンしておりましたところ、ハテナ?
と思われる面白い訳文に気付きました。その英語訳とは
it rains on my birth place
I walk bear foot
上記の翻訳文の意味は、「雨の降っている故郷(ふるさと)のなかを裸足で歩く」
という意味になっています。私はこれを、「雨の降っている里を裸足で歩く」 というふうに理解しておりましたので、ハテナ?
と思った次第です。つまり、俳句短歌には句読点は用いられることはありませんので 「雨ふるさと」 をこの訳者は
「雨、ふるさと(故郷)」 と理解したのであり、一方私は 「雨降る、里」
と読んだからの相違で、どちらが正しいのかは山頭火の研究者に委ねるとして、私ならこれを
In a raining village
I go in bare feet と、するでしょう。
それはともかく、日本語とは曖昧とまでは言いませんが他言語とも同様に非常に複雑で、「雨ふるさと」
を掛詞として考えてみますと、どちらが正しいとも間違っているともの決定的な判断資料を私は持ってはおりません。ただ、この句が作られた場所が特定できれば、どちらが正しいか判明するでしょう。
詩歌の翻訳には、きちんとした英文法をも踏まえたたものでなければならず、字面(じづら)だけからの翻訳には大きな問題が残ることは確かなことの一例ではありましょう。
言うまいと思えど今日の暑さかな
ここでちょっと話題を変えましょう。よく知られた話ですが、新作落語や漫才にも似たこの句の迷訳に次のものがあります。それはこの句を、
You might on my head today's hot fish.
と、するもので、解説するまでもなく
You might とは 「言うまいと」 の音を英語文字に置き換えたものであり
on my head も同じように 「思えど」 の訳文でありまして、結語の
today's hot fish は 「今日の暑さかな」 に当りますが、これは、熱魚(あつさかな)
ともじったものです。
噺家や漫才師の頭脳というものも確かに冴えたもので、ネタ作りにも大変な教養と頭脳が必要なのではないでしょうか。
お後が宜しいようで、今回はリラックスして、これまで。
付記
この」一文につき訳者より連絡があり、山頭火の句の原文は
「雨ふるふるさとはだしであるく」
である旨の連絡がありました。なーんだそうだったのか、の結論であります。特に議論するまでのことではありませんが、追記する次第です。
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