蝶
若さに駆られた蝶が
無邪気にもジャスミンからバラの花へと
ひらひらと飛ぶのを
見たことがある。
ゴキブリが太古のヘドロの上を
ズルズル滑り残酷にも押し潰されるのを
見たことがある。
愛を求めて
太陽に届こうとする
深緑の柔らかな草の葉が
その若さゆえ
踏みしだかれ粉々になるのを
見たことがある。
そうした残虐を以前に見た、
けれど茫然自失の悲しみのなかにあって
突然に牙をむきだす
素晴らしい牧羊犬に守られた
おとなしい綿羊たちのように
ポカンと口をあけ、ただ見ていることしかできはしない。
涙の渇きを抱きしめて
目から霧を取りのぞけ
心に鋼の刃を装備させ
我等を待ち
我等が踏みしめる大地のように
我等が心を堅固たらしめよ。