五月の春告草


腐敗している街の汚物と
火ぶくれた八月の熱暑のなかの
崩れかけた要塞の近くに朽ちている
さびれた墓地を歩いて過ぎるとき
私たちはじめじめした森を探索したが
春告草はうまく私たちの手を逃れた。

風のある五月の日々に
私の庭が花咲き
見かけ倒しの縞模様のペチュニヤや
芳香あるヴェルベット・リップや
豊富な色彩の列は
私たちを喜びで満たす間にも
春告草は依然として私たちの手を逃れていた。

けれど昨日、
褐色の固い囲みから
春告草が白く輝きながら
忽然と現れたとき、
唇から素晴らしい喜びが漂い出
私はほほ笑んだ。

ここ暑く乾燥した五月の
インダスの沙漠の町で
それらは砂の深みから引き寄せられた
みずみずしい塩の真珠のように
輝いた。

そして私の干からびた魂は
神の大地の驚きで
その縁までもが一杯に満ちた。

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