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第2章 自然 (5)

飛ばす


季節は確実に春に向かっている真冬の大気の中

ふんわりとした綿雲の浮かぶ筒抜けの青天井の下

武蔵野の原野の風を切り裂き

アクセルを目一杯にしてバイクを飛ばす


ブナやクヌギやケヤキやサクラや
その他もろもろの裸の樹木たちの枝々は

無数の目には見えない固く小さなそれぞれのつぼみから

これもまた目には見えない

膨々大巨大な大地のエネルギーを

無限の空間に向かって静かに放射し

聞こえぬ叫びを天に放つ


排気を撒き散らし
爆音を轟かせながら

自らの滅びを

その身体に歌わせて

バイクは

突っ走る