砂漠の町の夏の夕暮れどき


 
すぐにもの雨の気配
 
けれど雨は来ず
 
埃風
 
高いユーカリの木々を
 
揺さぶり、
 
嵐は
 
立ち去る。

 
黒い害虫は
 
その硬い頭を
 
庇に打ちつけ。
 
遠く西の方に紫雲の海を通して
 
太陽が垣間みえる。
 
水のような雲、海のような雲
 
(カリフォルニア沖の冷たい海みたい)
 
塵よりも小さな
 
飛行機が太陽を横切る。

 
キョウチクトウの長い生垣 ・・・
 
毒のある配糖体を
 
生む葉っぱ。
 
その枝々に群がる五月の蜂たち。
 
養蜂業者がきてその蜂を取り除き、
 
六月の朝の白い痛みがやって来た。

 
キョウチクトウ、キョウチクトウ、ネリウムのキョウチクトウ、
 
バシクルモン科の
 
毒のある
 
地中海の低木
 
(まったくに甘味のない
 
不思議な花。)
 
白と五月の赤の陰影と 白、
 
バラの赤の陰影、
 
血の赤の陰影。

 
その花々は五月の夕べを打ち砕き
 
夏の酸敗した光のなかの
 
鈍い大気に
 
いま立ちこめ。
 
飛行機は南に浮び、
 
スカイ ハーバーの方に向って漂い、
 
アレクサンドリアの方に向って漂っている。

 
エジプトの黄色い空間のなかの
 
ジャスティーン、ジャスティーン。
 
山オリーブ、オリーブ、オリーブの木。
 
山オリーブ、クリー、バルタザール。

 
甘い香料の中を蠕虫が這い、
 
涼やかな風はまるでなく。
 
啓示はまったくにない。

 

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