フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (36)
横川 秀夫訳

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十二月の光


美しい山々は緑のもやのなかにただよい
六月はまじか。太陽は地中に深く。
耕された幾エーカーかは新しい種子でいっぱい。
あまりにも早く。
いま私は切実に緩慢な季節を必要としていて、ときどき
私は自分の身体に十二月の雨模様の光を感じ。
立ち去るまえに
あなたが私の胸を枕がわりにその頭をいこわせ
ゆっくりとボタンを外すのには
貴方の上にだけ太陽光は差し込むものだから草は冷たすぎて。

そうではなかったのだけど
まるで私たちはこの一年中そんな風に淡白であったみたい
(別れはもうすぐなものだから)
私たちが共にすごしたことなど思いおこし私は青ざめ。

春のあいだじゅはあなたはいなくって。
日々は長かった。
それでも、もしもまた戻ってくれるのなら
あなたが家に帰るのが遅くなってもかまわない。

だけど、私にはそれが言えない。
束の間の春は燃え去って
私たちの最後の季節。
私たちのためには決して季節を与えてくれない太陽の下で
やがて私たちは永遠に動かなくなり眠りにつくでしょう。
私たちが触れるものはすべて冷たくなるでしょう。
私たちおたがい同士であってすら。

それから冬はふたたび戻ってきて、
まじかに、十二月の鈍い光の下、
私たちがたがいに共にあるあいだは、
太陽は黄道帯の上、
崖の縁に冷たく、
冬至にとどまっています。

 

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