フィリス ホーゲ詩集 愛と祈りの彼方  (37)
横川 秀夫訳

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日 没


私たちがこの風景に遭遇したのは偶然だった。
川へと続く長い道の彼方上空に
幾時間もかかってゆっくりと集積した光は
最初は青みを増しながら傾斜し
私たちに向かって歌いかけた、
それで私たちは耳を傾けざるを得なくなったのだった。

それから私たちはその歌が問いかけてくるその光について
話し答えあうことになった。
砕ける青い雲の下、静かな 「珊瑚の色」
暗くなりながら千切れる雲を輝かせる 「薔薇」
「あの赤のはじまりの色に名前はあるかしら?」
「深紅色。洋紅色。火。」
「そう。そう。そうした色彩たち」

それからその光は私たちをとらえて放さなかった。
重なり合って層をなすゆるぎない広大な光は西を横切り
緑に映えて黄金に輝き、その厳かな音楽は
私たちを解放し、私たちは静けさの中に落ちて行った。

幾マイルもの後方は、すでにして夜であった。
そして私たちの周りは夜で、私たちの前方も夜であった。
ついには私たちはたがいを見ることもできなく。
光は去った。

 

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