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第5章 長編叙事詩 (5)

ゴータマ・ブッダ                             次ページ へ

第5章 スジャータ

ゴータマが失踪した、という風評が走った。風評ははさまざまであったヤショーダラは身篭っている、とのうわさもあった 人々は何も言わなかった聡明なヤショーダラを賞賛し 、同情はヤショーダラに集中した。「なあに心配することはないスッドーダナの財力と剛毅がある未来永劫スッドーダナの家の滅びることはない」 と一人が言った ゴータマは出家したのだ、やがてこの上もない善きことがもたらされるであろうとアシタ仙人が言った 風評は静まって行った

忠僕チャンナ一人を従えてゴータマは泉のほとり にいた忠僕チャンナ一人を従えてゴータマは泉のほとりにいた


 インダス河の少女 (伊藤 泰助)

ゴータマは粗末なくすんだ色のカシャーヤの衣に着替えて坐し、チャンナにその髪を剃らせてから言った。 「宮殿に帰ってヤショーダラに仕えカンタ カの世話をせよ。」 涙をうかべながらチャンナはその言葉に従った。 

踵(かかと)重たくゴータマは一人、深い森のなかへと入って行った森の奥深く、で結坐を組もうとしたとき、 ゴータマはヤショーダラの 姿を自分の体内に見たヤショーダラは清らかに微笑み、その姿は消えていった。 ゴータマは結坐し静かな瞑想に入っていった。

ゴータマにとって、生とは生とは生であった生まれいずることは大自然の生理現象の 一つであった。が、老いることあるいは老いていないこと病むことあるいは病んでいないこと、そして死ぬことまたは死んでいないこと、についてゴータマの思索は続けられていた万巻の書物もこれに 能く答えているものはなかった

幾人もの著名な仙人を訪れ教えを乞うたある者は無所・有所の境地について論じ、ある者は非想・否非想の境地について論じ、またある者は無所有について論じた論ぜられたどの境地もゴータマを得心させてくれるものはなかった

托鉢によって得た一日に一椀の糧を食し深い森のなかで一人瞑想にふけ る作業は続けられ識の止滅である禅定を得た。が、その境地もゴータマを満足させ得なかったこの上の境地がある、とゴータマには思われた

ゴータマの思索は実践へと移行して行った古来から伝わる恐怖・嫌悪・孤独・止息・ 不眠片足立ち・茨の床・断食をも含めあらゆる行を極限にまで試みた。 がその精神の裡に何も変わることはなかった 極度に衰弱したゴータマはネーランジャ川で沐浴を終え岸にあがり樹木の下に腰をおろした。意識は急速に遠のいて行った

富豪の十人姉妹の末娘の少女スジャータはは川岸のピッパルの木の下に.枯木が横たわっているのを見た。良く見るとそれは 枯木ではなく骨と皮だけの ゴータマであったスジャータは従僕を呼び家に運び乳粥をその口に含ませたゴータマは蘇生した。

第6章 ゴータマ・ブッダ

やがてゴータマはウルヴェーダへと移動した。ネーランジャパジャータ川のほとりアシヴァッタの木の傘蓋の下に結坐し、七日間の瞑想に入った識の止滅と絶対的な静謐のもと、法悦も啓示もなかった。七日後ゴータマは究極の解脱を得たことを自覚したそれは心身と智恵からの完全な 解放であった。 ゴータマはその境地を説明するに言葉を持たなかった

やがて ゴータマは歩きだした

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