追  憶


 いまは夏、そして私はリンゴ園のなかでひとりぽっち
 ずいぶん前から、ここには誰もいない
 
 なるこは熟し、そしてまた紅玉
 
だけど風でおちたバラ色のリンゴを集めには
 誰もこない
 
 葉のしげみと腰まであるヒメムカシヨモギをとおして
  チョークの粉と授業のおわったあとで
  ロンドン・ブリッジやレッド・オーバーであそんだ
 古びた校庭を私はみている

 
けれど、世界のすべてが私たちの前にひろがっていた
 若くって四月の光のなかで土だらけになってあそんだ
 あの子供のころの朝からは誰もこない

 
デリシヤスのはじめの花、
 そして私を呼んでいるお友だちたちの声

 
呼んでいる、呼んでいる

 レッド・オーバー、レッド・オーバー
 カム・オーバー、カム・オーバー