序章   あなたの魂 (ユリギス・ブレカイチス)   霧の中 (ヘルマン・ヘッセ)  パルチザンの葬儀 (ジョナス・アイスチス)
第 1 章 | 第 2 章 | 第 3 章 | 第 4
 | 第 5 章 | 第 6 章  | 第 7 章 | 第 8 章 | 第 9 章 | 第 10
11 章 | 第 12 章 | 第 13 章 | 第 14 章 | 第 15 章 | 第 16 章 | 第 17 章 | 第 18 章 | 第 19 章
第 20 章 | 第 21 章 | 第 22 章 | 第 23 章 | 高村 光太郎
特集 | 萩原 朔太郎 特集 | BACK TO INDEX

次のペ^ジへ

序章 (1)  あなたの魂  

ユリギス・ブレカイチス詩
 横川秀夫訳 松本いずみ朗読
 

 

 あなたが死んだとき
 幾日ものあいだ私の目のなかのいちばんに深い部分は
 白いおちつかないおびえやすい
 一羽のハトにとりつかれていた。
 いくばくもなく羽根をもち飛びさり
 そして灰色がかったうす明かりのなかに消えてゆく
 その姿が私にはボンヤリと見えた。
 けれど私のこころは知っていた。あれはあなた。あなたの魂。
 
 あの悲しいけれど放射する認識 ― それでよかった。
 秋とはあのようなときであり得るのです、
 しずかな光は叡智にと変換されて、
 まるで鏡のようにおおきく開けた空とこの地上に
 保ちつづけるその高い瞬間のなかに
 魂のなかでふるえる感情の芽がみえます。
 すべてがあまりに清く澄んでいるので、それは
 空を地上を
 またあなた自身をもその中間にさまよわさせ
 そう、死をもすら傷つけるのです。

 あなたが何であったか私はけっして忘れはしない。
 白いこわれやすい、一羽のハト。








ユリギス ブレカイチス (Jurgis Blekaitis)
リ トアニア詩人 (生存年月など一切不詳)
英語原文: リ トアニア共和国大使館 提供