萩原 朔太郎 特集
旅 上
竹
白い月
晩 秋
自然の背後に隠れて居る
蛙の死
馬車の中で
BACK TO INDEX
INDEX に戻る
馬車の中で
高見 優子 朗読
馬車の中で
私はすやすやと眠ってしまつた。
きれいな婦人よ
私をゆり起してくださるな
明るい街燈の巷(ちまた)をはしり
すずしい緑陰の田舎をすぎ
いつしか海の匂ひも行手にちかくそよいでゐる。
ああ、蹄(ひずめ)の音もかつかつとして
私はうつつにうつつを追ふ
きれいな婦人よ
旅館の花ざかりなる軒にくるまで
私をゆり起してくださるな。